研究概要 |
近年、生体における感染防御機構の一環として、抗菌ペプチドの存在が注目されている。ヒトでは、抗菌ペプチドとして、6種類のalpha-defensin、4種類のbeta-defensinが発見されており、その抗菌作用によって感染防御に関与していることが想定される。本研究は、defensinと炎症性肺疾患の関連に視点をおき、defensinが治療薬となりうる可能性を探索し、治療薬の開発および実用化を目的とする。 <defensinの抗菌作用機序>hBD2を中心に、defensinの抗菌メカニズムを探索した。defensinは、Na^+の存在によって濃度依存的に抗菌活性を消失することが知られており、イオン環境が抗菌作用発現に重要と考えられる。今回、新たにCa^<2+>など陽イオンの存在が、hBD2抗菌活性を減弱することを明らかにした。 <defensinの誘導・発現分子機構>hBD2の誘導・発現分子機構を、ヒト気道培養細胞を用いて検討した。hBD2-mRNA発現等を指標として、LPSによるhBD2発現を検討した。その結果、1)転写因子(AP-1,NFk-B)がhBD2誘導・発現に必須であること、2)steroidがhBD2誘導・発現を減弱すること、3)COX inhibitorはhBD2誘導・発現に影響を与えないことを明らかにした。 <マウスdefensinの探索>新たに6番目のマウスbeta defensinを発見し、mBD6と命名、発表した。mBD6は、筋肉に多く分布し抗菌活性を呈した。さらに、ヒトおよびマウスの精巣上体において特異的に発現するdefensin(hBD5,6およびmBD11,12)を発見し、やはり抗菌活性を有することを報告した。本知見より、defensinの多彩な生理学的機能が推測される。
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