研究概要 |
1)患児および両親のHO-1遺伝子解析から,母親アリルにエクソン2の欠損,父親アリルではエクソン3に2塩基欠損があることがわかり,患児はその複合ヘテロ接合体であることが知れた。さらに母親の染色体遺伝子を検索したところ,エクソン2を含む1,730bpにおよぶ大きな欠損が証明された。さらに、エクソン2はAluくり返し配列にはさまれる構造であることが知れ、本例のエクソン2欠損はAluくり返し配列の相同的組み換えによる配列欠失と考えられた。 2)HO-1発現は正常単球で強く,T細胞では逆に弱く,細胞系特異的なHO-1発現調節機構の存在が示唆された。このことはウエスタン法でも確認された。また、患児の単球では細胞接着や貪食に関与するCD36, CD14, CD16表面抗原が低下しており、そのことが機能障害を惹起しているものと思われた。単球は種々の感染症病態と深く係わっており、細菌性感染症,ウイルス感染症,および血管性病変(川崎病など)における血液細胞のHO-1発現状態の比較検討し、また、感染症の経過を追って観察すると、HO-1発現に変動がみられた。種々の感染症の病態におけるHO-1の関与が異なる可能性が示された。 3)最近マクロファージの活性化とがんの浸潤,転移における血管新生が密接に関連することが知られるようになった.マクロファージの活性化がHO-1の発現と関連していることは,前述のごとくHO-1欠損の患児でマクロファージ/単球の機能低下がみられたことから明らかである.小児固形腫瘍を材料として,免疫組織染色法によりマクロファージの浸潤,HO-1の発現,血管新生の3者の関連性を検討中である。
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