研究概要 |
妊娠14日のICRマウス終脳より、bFGF存在下で神経上皮細胞cell line(ICRNSC12)を確立した。この細胞を用い、はじめに3種類の紡錘糸形成阻害剤(Nocodazole, Taxol, Monastrol)の分化誘導能について検討した。神経細胞への分化については形態およびEGFP発現を指標にした。その結果、Nocodazoleは速やかに細胞のapoptosisを誘導したが、他の2剤についてはapoptosisの誘導は少なかった。特にMonastrolではapoptosisの誘導はほとんど認められなかったため、72時間暴露して神経系への分化について観察したが分化は認められなかった。 紡錘糸チェックポイントはanaphase-promoting complex(APC)と呼ばれるubiquitin ligaseの機能を抑制して、APCの基質であるmitosis特異的蛋白の分解を抑制することにより、分裂後期以後の細胞周期の進行を抑制している。APC基質のひとつにGemininとよばれる蛋白が存在するが、この蛋白はDNA複製抑制作用を持つと同時に神経系初期発生において神経板形成領域の決定に作用すると考えられている。この作用はBMPシグナルの抑制作用によって達成されると考えられている。そこで神経系への分化抑制因子であるBMP4存在下でmonastrolによる分裂中期停止の効果について検討した。その結果monastrolを24時間暴露後にはEGFRの発現は増強し、monastrol暴露後、monastrol、BMP4無添加培地に戻した場合対象に比べ形態的にも神経系への分化が促進されていることがわかった。さらに紡錘糸形成チェックポイントのひとつのコンポーネントであるMad2をRNAi法でknock-downすると、この分化効果は失われることがわかった。このことは脳形成において紡錘糸形成チェックポイントが何らかの役割を担っている可能性を示唆している。 現在in vivoで実際に紡錘糸形成チェックポイントが脳形態形成に関与しているかを確認するため、マウス全胚培養法を用いた研究を開始したところである。
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