研究概要 |
骨への親和性を損なうことなく血液からの速やかな放射能消失を与える骨代謝機能診断および転移性骨腫瘍の疼痛緩和に有用な放射性薬剤の開発を目的として,生体内で安定な^<99m>Tc単核錯体を骨に高い親和性を有するビスホスホン酸(BP)の分子に導入した新たな薬剤設計を検討した.今年度は,生体内で安定でタンパク結合の少ない有機レニウム錯体であるシクロペンタジエニルトリカルボニルレニウム(CpTR)構造をBPへ導入した新たな化合物の設計,合成と実験動物における体内動態を検討した. [^<186/188>Re]CpTRのグリシン結合体(CpTR-Gly)は,CpTRに比べて生体内での代謝安定性は大きく増大する一方で血清タンパク質との結合を示さないことから,CpTR-Glyを[^<186/188>Re]Reの標識構造に選択し,アミノ基を導入したBPであるABPと結合した.本化合物は,フェロセン誘導体にグリシンメチルエステルを結合後,放射性および非放射性レニウムとのdouble ligand transfer反応によりCpTR-Glyのメチルエステルへと変換後,ABPとの結合反応より得られた. [^<186/188>Re]CpTR-ABPをマウスに投与した場合の体内放射能動態を検討したところ,血液からの速やかな消失と骨への速やかな集積が観察された.また生体内でのレニウムの酸化の指標である胃への集積は認められず,生体内において本化合物が安定なレニウム構造を維持することが支持された. 昨年および今年の研究成果から,BPとキレート構造とを分子内に独立して存在させる標識薬剤の設計により,^<99m>Tc錯体の高い安定性と骨への集積性とが両立可能であることが明らかとなり,骨代謝機能診断および転移性骨腫瘍の疼痛緩和を目的とする放射性薬剤の開発に対する本薬剤設計の有用性が示された.
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