研究課題/領域番号 |
13877143
|
研究種目 |
萌芽研究
|
配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
放射線科学
|
研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
大西 武雄 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (60094554)
|
研究期間 (年度) |
2001 – 2002
|
研究課題ステータス |
完了 (2002年度)
|
配分額 *注記 |
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
2002年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2001年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
|
キーワード | p53 / C末端ペプチド / 放射線 / 温熱 / リン酸化 / アポトーシス / Caspase-3 / DNA結合能 |
研究概要 |
【目的】本研究は、変異型p53タンパク質にアポトーシス誘導能を回復させる働きを持つp53C末端ペプチドを人工的に合成し、それを癌細胞に導入することにより、変異型p53患者においても効率の良いアポトーシスを誘導することをねらいとしている。本年度はさらに細胞増殖の停止をもたらすWAF1タンパク質の発現誘導がp53C末端ペプチドによって回復するかどうかについても調べた.【方法】p53の表現型が正常型の舌扁平上皮癌細胞SASとp53欠損ヒト肺癌細胞H1299に変異型p53遺伝子(codon 248, Arg→Trp)およびneoコントロールベクターを導入し実験に用いた。X線あるいは温熱処理する前に、二種の合成p53C末端ペプチド(アミノ酸残基361-382と353-374)をこれら細胞に導入し、アポトーシス誘導を調べた。アポトーシスの解析はヘキスト染色法およびアポトーシス関連蛋白質の免疫細胞染色法で行った。細胞増殖の停止についてはWAF1タンパク質の免疫細胞染色法で解析を行った。また、未処理あるいはX線/温熱処理した細胞から抽出した蛋白質にp53C末端ペプチド加えたin vitro gel shift assayをSASとH1299の両細胞で行った。【結果】正常型p53癌細胞は変異型p53癌細胞に比べX線あるいは温熱誘導アポトーシスの出現率が低いが、合成p53C末端ペプチドを併用すると、変異型p53癌細胞のX線あるいは温熱誘導アポトーシスが増強されることを確認した。また、合成p53C末端ペプチドを前処理すると、変異型p53癌細胞にもX線/温熱で誘導される活性型Caspase-3陽性細胞、断片化PARP陽性細胞およびWAF1陽性細胞の増加及びアポトーシスの増強が見られるようになった。p53C末端ペプチドは変異型p53蛋白質のDNA(p53CON)結合能を回復させるが、SASあるいはH1299細胞にX線あるいは温熱処理するとその結合能はより増強されることが分かった。このような効果はnegative controlのp53N末端ペプチド(14-27)には見られなかった。【考察】p53C末端ペプチドによる変異型p53のDNA結合能の回復は放射線/温熱によるp53活性化で増強されることが示唆された。その結果、p53依存的なCaspase-3活性化を介したX線あるいは温熱誘導アポトーシスが増強されるものと考えられる。一方、WAF1タンパク質の誘導回復が見られたことから、細胞増殖の停止もp53C末端ペプチドで増強される可能性が示唆された。【結論】変異型p53癌細胞に対しp53C末端ペプチドを併用した放射線/温熱治療が有効であることが示唆された。
|