研究概要 |
本研究の究極の目的はヒトに被移植中間層皮膚に汗腺を導入することであり、そうであれば最近進歩著しい再生医療を応用して、患者自己の体性幹細胞をみつけ、これが汗腺細胞に分化・増殖する可能性を検討し、汗腺細胞を移植皮膚へ導入することを考えるのが得策であろうとの結論に達した。そのためには、体性幹細胞の汗腺細胞への分化・増殖のための足場(ハード)および化学性因子(ソフト)を検討する必要がある。よって、まず熱傷ラット早期における個体の被移植部(熱傷創部)を流れる血中の分化・増殖因子(サイトカイン)動態を検討した。 方法:(1)250〜300gのSDラットを用い、40mg/kgのベントバルビタール腹腔内投与麻酔下に、背部に30%TBSAIII度熱傷を作製した。(2)熱傷(-)、3、24、48、72時間後、麻酔下に頸動脈にカニュレーションしヘパリン採血、犠死させた。血漿を24時間蓄尿とともに-80℃に冷凍保存した。 結果:熱傷(-)、3、24、48、72時間後の値は以下の通り(いずれもn=5、単位はpg/ml)。IL-1β:24±10,9±3,9±3,6±0,94±79、IL-8(GRO/CINC-1):42±12,285±15,124±52,22±5,34±15、IL-1ra:12±0,2428±54,222±112,79±39,268±140、IL-10:17±5,57±9,10±0,10±0,209±77、8-OHdG(遺伝子の活性酸素傷害物質)/Cr比:66±8ng/mgCr,24±0,39±6,59±12,140±22。 考察:観察期間においては72時間に活性酸素傷害指標は最大となったが、これには3時間後のIL8の増加(これに引き続く好中球の活性化)が関与したと考えられた。Th1系のIL-8、IL-1βはTh2系のそれぞれIL-1ra、IL-10と連動しており、一方の活性化を制御していると考えられた。 結語:増殖因子(サイトカインなど)はこれに対する生体の制御因子と連動していると考えられた。
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