研究概要 |
骨髄幹細胞から臓器としての肝臓を分化誘導することを目的として、まず、骨髄幹細胞と同様に多分化能を有する胚性幹(ES)細胞を用いて実験を行った。Hanging drop culture systemにて5日間培養したところ、肝細胞に特異的に吸収・排泄されるICGの取り込みを認める細胞群を分化誘導することに成功した。遺伝子解析にて、albumin, α-fetoprotein,transthyretin, α-1-antitrypsin,glucose-6-phosphate, hepatocyte nuclear factor-3βなどの肝細胞マーカーのみならず、cytosolic hemoprotein tryptophan catabolizerであるtryptophan-2,3-dioxygenase, urea cycleのfirst enzymeであるCPSase, gluconeogenesisのregulatory enzymeであるPEPCKなどの肝特異的酵素、さらにはICGの吸収・排泄に関わるliver-specific organic anion transporter-1など肝細胞特異的マーカーの発現を確認した。電子顕微鏡を用いた形態学的解析では、細胞質内に多数のmitochondria, rough surfaced endoplasmic reticulum,lysosomes, Golgiが存在したほか、desmosomesおよび微小胆管bile canaliculusの存在も明らかになった。次に、この方法で単離した肝細胞を放射線照射したマウスに門脈内投与した結果、1ヶ月以上の生着とアルブミン合成能の保持を認めた。これらの知見は今後、肝臓移植に代わる新たな細胞移植としての可能性、有用性を示すものと考えられる。
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