研究概要 |
本年度の研究では,(1)GM-CSF受容体ノックアウトマウス並びにGM-CSFノックアウトマウスの骨髄細胞を用い,ヒトFlt3/Flk2リガンド並びにヒトIL-6にて2週間の初期培養を行い,その後マウスTNFαを更に添加し,GM-CSF非依存性樹状細胞の誘導と長期大量培養法を確立した。樹状細胞純化の為の分離システムとして,AutoMACS(自動磁気分離装置)を用い,CD11c或いはCD80,CD86などの,樹状細胞マーカーにて,分離後FACS解析及び細胞染色によって,純化精度を検討した。CD11c或いは,CD80,CD86標識細胞を分離精製した細胞は,ほぼ70%程度樹状細胞を含むが,ラット骨髄細胞から同様の培養方法にて,誘導した樹状細胞群をNKR-P1A (CD161)にて,分離精製した,ほぼ均一な樹状細胞とは,明らかに異なり,マクロファージを含む不均一な細胞からなる事が,判明した。従来の報告と異なり,これらCD11c, CD80,CD86のマーカーのみにては,樹状細胞の完全な分離は出来ないものと考えられた。(2)蛍光蛋白(EGFP)遺伝子導入マウスの骨髄細胞を用い,上記培養方法を応用して,樹状細胞の蛍光蛋白発現強度をFACS解析及び細胞染色法にて,検討を行った所,培養成熟樹状細胞では,末梢血リンパ球,多核白血球と異なり,ほぼ完全に蛍光蛋白が減弱ないし消失する事が判明した。(3)各種遺伝子ヴェクター(アデノウィルス・レンチウィルス・HVJ)を用いた遺伝子導入系に於いて,成熟樹状細胞への遺伝子導入は極めて困難である事が明らかとなった。今後,樹状細胞への遺伝子導入と,感染免疫或いは腫瘍免疫への実験・臨床応用には,更に検討が必要である。
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