研究概要 |
前年度までの実験で,Smad 3蛋白の翻訳を抑制するSmad 3 antisense発現adenovirus vectorの病原性が問題となったため,本年度は,細胞毒性が少ないとされる合成antisense oligonucleotideをlipofection法で細胞に導入し,Smad 3蛋白の翻訳を抑制する実験を行った. human Smad 3遺伝子の翻訳領域全長とFlag tagを発現するPlasmid vector(hSmad3-pcDNA3.1+)を構築,HEK293細胞にlipofection法で導入し,human Smad 3遺伝子をoverexpressionさせた.Smad 3遺伝子のoverexpressionの確認は,抗Flag tag抗体を用いたwestern blot法で行った. エネルギー計算に基づくZuckerらのアルゴリズムによりSmad3 mRNAの二次構造を予測した.antisense oligonucleotideが結合可能と予測される一本鎖領域のうち数ヶ所を標的として,antisense oligonucleotideの配列設計を行った.ヒトとラットのSmad3 mRNA配列を比較し,両者ともに使用可能な配列を候補とした.Controlとしてスクランブル配列のoligonucleotideを作製した. 作製したantisense oligonucleotideを,human Smad 3遺伝子をoverexpressionしているHEK293細胞にLipofection法で導入し,もっとも効果的にSmad3の発現・翻訳を抑制できるantisense oligonucleotideの配列をwestern blot法で検討した. 結果的に,開始Metをわたる配列のantisense配列のS-oligo(18mer)がhuman Smad 3蛋白の翻訳を抑制した. 現在,Sprague-Dawlay(SD) ratにdimethylnitrosamine(DMN)を腹腔内投与する事で得られる肝線維化モデルに,尾静脈からこのS-oligoをlipofection法で導入し,肝線維化の抑制が可能であるか検討を行っている.
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