研究概要 |
本研究は,脳病変の早期の的確な診断法の確立のために従来の脳病変核医学診断における投与後後期の静止画像に加えて,トレーサーの超早期動態,拡散,流体速度場に関して脳病変の組織構造解析を行うことである. 脳腫瘍を対象に^<18>F-fluorodeoxyglucose(FDG)ポジトロントレーサーを用いて,トレーサーの拡散パターンを検討したところ,FDGの初期集積部位,初期から後期への拡散速度,および流跡パターンにおいて組織学的構築に関連する知見が得られた.良性脳腫瘍(髄膜腫)においては,FDGが一元性に集積が始まり,同心円状に周辺に拡散し,早い時期にwashoutされている.これに対して、悪性脳腫瘍(退行性乏突起細胞腫)は,トレーサーが多元的に集積し,多方向にかつ不均一に拡散し,washoutが遅延する傾向にあった.したがって,超早期のFDG動態画像は腫瘍代謝活性とともに組織構築の不均一性を反映しているものと推定された.今後,脳病変の診断において超早期を含めた後期までの拡散ベクトルおよび流跡パターンなどの流体力学解析は,的確な組織不均一性の定量化さらに病変特異診断法の確立に有用な方法になりうる.
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