研究概要 |
我々は、経食道エコーを用いて病的肺で、肺局所血流の観察が可能かを検討している。種々行った実験のうち、現在論文掲載予定の片肺モデルについて報告する。片肺は麻酔法また救命時に使用される方法であるが、酸素化能が障害される。障害の機序として非換気肺への血流の変化が指摘されている。またカテコラミンは病的肺で、酸素化能に影響を及ぼすことが知られている。経食道エコーによる片肺モデル観察の有用性をカテコラミン投与時の、酸素化能変動と肺局所血流量変動の相関から推察した。 方法:16匹の雑種成犬を全身麻酔下に、人工呼吸管理を行い、イソプロテレノール群とドブタミン群に分けた。ダブルルーメン気管チューブを用いて、左肺非換気片肺モデル犬を作製した。含気を失った左肺底部を経食道エコーで下行大動脈を介して観察した。第3分岐の肺静脈の血流をドップラー法で観察し、時間速度積分値と最大血流速度を測定した。酸素化能の指標として、肺動脈カテーテルの指標からシャント率を計算した。イソプロテレノール0.05μg/kg/minまたはドブタミン10μg/kg/minを投与し、酸素化能変動と肺静脈血流変化を評価した。 結果;時間速度積分値とシャント率はイソプロテレノール投与により、投与前の3.27±0.72 2.07±0.36倍と上昇した。時間速度積分値とシャント率の変化の間には有意な相関が認められた(r=0.77,r^2=0.57、P<0.05)。ドブタミンとイソプロテレノールのシャント率と時間速度積分値の上昇で有意な差が認められた(P<0.01)。 結論:経食道エコーを用いて、犬片肺モデルで病変肺局所肺血流の観察が可能であった。また、このモデルを用いてイソプロテレノールとドブタミンの肺酸素化能に及ぼす影響を、肺血流量変化の面からとらえることが可能であった。
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