研究概要 |
(1)estrogen receptor-related receptor(ERR)-α,β and γはorphan receptorsであり、天然型エストロゲンには反応しないが、EREを認識し、外因性のligandsのない時に活性化するとされる。ERR-αとは相同性ER-αが高いことが判明している。 子宮におけるERR-α,γ発現とエストロゲンとTCDDによる影響を検討した。内因性エストロゲンの影響を排除するため、卵巣摘出マウスを用いた。 卵巣摘出マウス子宮において,ERR-α,γ発現を認めた、エストロゲン投与により、ERR-α発現は増加したが、ERR-γ発現にはほとんど影響を与えなかった。TCDD投与によりERR-α発現は増加したが、E2投与の影響より弱かった。TCDD+E2併用投与では、ERR-α発現はE2単独より増加した。ERR-α発現のエストロゲン、TCDDによる影響はER-αmRNAに類似するが、TCDD+E2併用投与では相乗性が高いものと考えられた。 代表的SERMSであるエストロゲン存在下でトレミフェン(TOR)投与によりERR-αと相同性の高いER-α発現は減少したが、ER-β発現には影響を与えず、TOR単独では有意に発現は亢進した。TORは長期的にはマウス内膜発癌に抑制的に作用したことを考慮すれば、ERR-α発現が関与している可能性がある。 (2)エストロゲン依存性腫瘍である子宮内膜癌において、脱分化、筋層浸潤、臨床進行とともにestrogen receptor(ER)αやERβはダウンレギュレーションされる。一方、ERRα,ERRβ,ERRγのうちERRαは筋層浸潤、臨床進行とともにアップレギュレーションされ、ERRγは筋層浸潤とともにアップレギュレーションされた。このことは共役転写因子を競合的に利用しているためと考えられ、さらにERRはリガンドなしで共役転写因子と結合し、転写を活性するので、ERRが子宮内膜癌の悪性化活性に関与している可能性が示唆される。たとえ、直接的関与がないとしても、悪性化のインディケーターにはなり得ると考えられた。
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