研究概要 |
多嚢胞卵巣症候群(PCOS)と早発卵巣不全(POF)を主な対象として、難治性排卵障害遺伝子異常を検討し、従来の病態ではなく、病因による排卵障害の分類を試みた。 PCOS38症例、特発性POF15症例よりゲノムDNAおよびtotalRNAを採取し、DGGE(denaturing gladient gel electrophoresis)以法、およびdirect sequencing法を用いて以下の遺伝子について遺伝子異常の有無を検討した。 (1)growth differentiationfactor-9(GDF-9)およびGDF-9B missensemutationは認めなかった。 (2)FSHレセプター これまで海外で報告されているinactivating mutationは認めなかった。 (3)Mullerian inhibiting substances(MIS) 一部の症例にmissensemutationを認めたが、正常コントロール症例との間に有意な頻度差は認めなかった。 (4)ドーパミンレセプター(D1,D2,D3,D4,D5) 一部の症例のD1、D2、D3、D4に、アミノ酸変異を認めたが、正常コントロール症例との間に有意な頻度差は認めなかった。 以上のように、これまで卵胞のリクルートメントや発育に重要な役割を果たしていると言われている遺伝子、PCOSの成因に関与していると言われているドーパミンのレセプターに有意な異常は認めなかった。今後、さらに対象遺伝子を拡大して、排卵障害の遺伝子異常から見た新たな概念の構築と個別的治療の開発に関する検討を進めていく予定である。 なお、本研究は滋賀医科大学倫理委員会の承認を受け、患者より同意を得た上で試料の採取を行った。
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