研究概要 |
1.頭蓋、顎顔面組織に骨芽細胞の幹細胞としての神経堤幹細胞が存在するか調べる。 神経堤からの移動終了後の胎生14.5日から胎生17.5日までの異なる時期のマウス頭蓋および下顎から皮膚を取り去り、トリプシンとコラゲナーゼにより組織から細胞を遊離させ、1個の細胞から1個のコロニーが形成されるように疎な密度でプレートにまき、14日間培養した。多分化能を有する神経堤幹細胞は神経細胞、グリア細胞、筋線維芽細胞、骨芽細胞の4種類の細胞のいずれにも分化しうるので、これら4種類の細胞のマーカーを用いて染色を行い、コロニーがどの種類の細胞により構成されているかを調べた。いずれのコロニーも筋線維芽細胞および骨芽細胞により構成されていて、4種類の細胞すべてを含むコロニーは認められなかった。この結果より、多分化能を有する神経堤幹細胞は胎生14.5日以後の頭蓋、顎顔面組織には存在しないか、この実験系で検出できない程度に極めて低い頻度で存在することが考えられた。 2.FACSを用いて頭蓋、顎顔面組織での神経堤幹細胞を同定、濃縮する。 1.と同様に、組織から細胞を遊離させ、1次抗体として抗p75抗体と抗PO抗体を用いて二重染色し、fluoresceinをconjugateさせた2次抗体で染色し、FACSを用いて、細胞をp75+PO-(p75抗体に染まり、PO抗体に染まらない細胞群), p75+P0+, p75-P0+, p75-P0-の4つの群に分けたところ、p75-P0-群が大部分を占めた。各群の細胞をコロニーを形成できるような密度でプレートにまき、14日間培養し、1.と同様にして細胞マーカーを用いて、形成されたコロニーがどの種類の細胞により構成されているかを調べたが、4種類の細胞すべてを含むコロニーは認められなかった。この結果は、多分化能を有する神経堤幹細胞は胎生14.5日以後の頭蓋、顎顔面組織には存在しないことを示唆した。
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