研究概要 |
唾液腺を支配する交感神経の活動を記録することが,本研究課題の大きな目的である。とくに,覚醒状態で自由に行動しているときの活動を慢性的に記録する方法を開発するものである。13年度は慢性的記録用の電極を開発することに焦点を絞り、14年度は実際の神経活動を分析した。以下にその概要をまとめる。 平成13年度 1.慢性実験に適したラットについて,交感神経の露出が比較的容易な顎下腺を対象とした。顎下腺支配の交感神経は3-5mm露出が可能であり,電極を装着する場所を確保できる。 2.交感神経の直径は約100ミクロンであり,慢性記録用に従来から考案されているコラーゲン電極は装着が不可能であった。このため双極金属電極を試作することとした。電極には30-50ミクロンの白金イリジウム線を使用し,ポリエチレンチューブ(内径500ミクロン)に極間距離1mm以下で装着した。この電極に交感神経を挿入し,神経活動を記録した。 3.神経活動は複合活動電位であり,機能的単一神経活動を記録することはできなかった。また,麻酔下の動物では記録可能であったが,長時間の電極の保持と絶縁が不完全であるため,覚醒動物での記録は数時間程度であった。 平成14年度 1.神経活動を分類するため、記録部位の末梢側あるいは中枢側を切断して記録した。その結果、交感神経中には遠心性神経と求心性神経が存在することが分かった。 2.遠心性神経は口腔領域の刺激に応じて反射的に活動したが、求心性神経は顎下腺体の圧刺激に応答した。 上記の研究実績は、顎下腺交感神経の活動が記録可能であることを示すものである。また、交感神経が従来考えられた遠心性の調節だけでなく唾液腺の圧などを感知する求心性を有することが分かった。これらの知見は今後、新たな研究を展開する上での基礎的知識として極めて重要である。
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