研究概要 |
実験1: 矯正歯科治療上必要なため抜去される上下顎第一小臼歯を患者に研究内容を充分に説明し,同意を得た後(愛知学院大学歯学部倫理委員会承認済実験),熟練した口腔外科医が抜歯し,実験に供与した.その抜去歯歯冠部をロビンソンブラシにて清掃後,10%次亜塩素酸ナトリウムに3分間浸した後,30%過酸化水素水に浸し,その後,5%P&S含有PBS(-)にて良く洗浄した.これをセルストレーナーの中にマイクロキャリアー(旭化成)を満たした中に植立した.そのセルストレーナーを培養液を満たした90mm培養皿の中に入れ,37℃,5%CO2環境下のインキュベーター内にて2ヵ月間培養した.その結果,昨年までは約30%にバクテリアの繁殖をみたが,今年度は5%以下に抑えることができた. 実験2: 上記と同様の方法で抜歯を行い,2ヵ月間培養した.培養後,10%ホルマリンにて固定,脱灰後,組織切片を作成し,PCNA染色を行った.その結果,歯根面を覆う歯根膜全体にわたりPCNA陽性の細胞が観察され,細胞の増殖があったことが示唆された. 実験3: 上記と同様の方法で抜歯を行い,アスコルビン酸を添加した培地にて培養した歯の脱灰連続切片を作製し,昨年に引き続きヘマトキシリンエオジン染色を施し,光学顕微鏡にて観察した.その結果,歯根全周にわたり歯根膜様の線維組織が観察された.さらに赤く濃染された二次セメント質も歯根全体の多くの部分にみられ、しかも,切片を作成する過程で剥がれてしまった部分が多く認められた.これは,この二次セメント質が比較的新しい時期,つまり,培養中に新生されたことを期待させる結果であった.
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