研究概要 |
・ハムスター実験的歯周炎の発症に及ぼすストレスの影響 平成13年度に引き続き,細菌感染により惹起させたハムスター歯周炎におけるストレスの影響を調べた。実験群にはrestraint stress(拘束ストレス)を与え,12週後の歯槽骨高径(臼歯のセメントエナメル境から歯槽骨頂までの距離)を測定し評価した。その結果,(1)非感染対照群で:0.653±0.061mm,(2)感染対照群:1.063±0.117mm,(3)非感染ストレス群:0.782±0.035mm,(4)感染ストレス群:1.089±0.161mmであった(各群n=4)。統計学的には(1)と(2)の間に有意差があり,(1)と(3)の間,(3)と(4)の間に有意差はなく,明らかなストレスの影響を探知することはできなかった。しかしながら,平均値を比較すると,非感染および感染の両方の場合ともストレスによる歯槽骨レベルの減少傾向が認められた。以上のように,歯周炎の発症に伴うストレスの関与を直接的に証明するには至らなかったが,ストレスの関与を示唆する結果は得られた。 ・骨基質蛋白の発現に及ぼすストレス関連因子と歯周病原因子との関連 ラット骨芽細胞培養系において,代表的なストレス関連物質であるサブスタンスPがオステオポンチン,オステオカルシン,BSPなどの骨特有蛋白遺伝子発現に及ぼす影響を調べるとともに,歯周病原菌由来リポ多糖との相互作用についても検討した。その結果,サブスタンスPは単独で上記の骨基質蛋白の発現を抑制し,リポ多糖の共存下ではさらなる抑制を誘導した。また,サブスタンスPの作用はリポ多糖の作用とは独立した経路による炎症性サイトカインの産生を介した反応系であることが示された。 以上の結果,ストレスは歯周炎の発症を促し,サブスタンスPや炎症性サイトカインの関与を経て,歯槽骨吸収が誘導されることが示唆された。
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