研究概要 |
1.ハードウェアの作成 バイモルフ型ピエゾ素子を駆動源としたプラスチックピンによる8点点字セル(ケージーエス株式会社製SC2)を用い、主に手指末節に適用することを目的とした体性感覚刺激装置を考案・作成した。ピエゾ素子に含まれる強磁性体による誘発磁場へのアーチファクトを取り除くため、パーマロイ製のシールドボックスを用いセル本体を磁気遮蔽する構造とした。この刺激提示部とケーブルで接続された駆動回路部は、ピエゾ駆動のための高電圧生成、MPU(富士通MB89PV130A)によるシーケンス制御回路等より構成した。 2.ソフトウェアの作成 上記刺激提示部を3線同期式シリアル通信により駆動回路部より制御し、8点のうち任意の組合せの複数のピンをポップアップ・ポップダウン制御できるよう刺激提示ソフトウェアをアセンブリ言語で作成し、ROMに書き込んで駆動回路部のMPUに実装した。 3.本刺激装置を用いた誘発反応の記録 上記刺激装置を用いて、ON-、OFF-durationをそれぞれ500msec、8ピン全てがポップアップ・ダウンするシークエンスにより右第2指末節を刺激し、誘発電位、誘発磁場反応の記録を試みた。全8ピンのポップアップの瞬間からON-response、ポップダウンの瞬間からOFF-responseを、誘発電位、誘発磁場反応ともに明瞭に記録できた。ON-, OFF-responseともN1,P1,N2,P2の4つの成分が確認された。 4.データ解析結果 各成分ともOFF-responseの方がON-responseよりも有意に振幅が小さかったが、潜時および脳内局在部位には有意差は認められなかった。ON, OFFのデューティ比を変化させ、先行するOFF(またはON)状態の持続時間の変化に対するON(またはOFF)反応のN1-P1振幅の変化の様子を解析した結果、ON-, OFF-responseの回復曲線に顕著な相違を認めた。 5.研究実績のまとめ 点字セルを用いた体性感覚刺激装置を考案・作成し、手指に適用することにより体性感覚誘発反応を記録することに成功した。手指への圧刺激の解除時にも聴覚刺激の休止時に誘発されるようなOFF-responseが誘発されることが初めて示された。ON-responseとの回復曲線の違いから、皮膚感覚受容における、tonic/phasic receptor〜slowly/rapidly adapting systemの生理学的挙動の相違を示唆する所見を得た。
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