研究概要 |
山梨県近郊の400床以上の大学病院・総合病院計4施設の手術室看護師74名(平均年齢27.9±5.6歳,平均臨床経験年数6.3±5.4年),2施設の外科系病棟看護師(平均年齢28.8±7.0歳,平均臨床経験年数7.0±6.8年)を対象として,MST (Moral Sensitivity Test)日本版と倫理的な問題だと思った場面の自由記述による質問紙を用いて,道徳的感性の調査を行なった。分析は,手術室看護師と外科系病棟看護師のMSTの差をMann-WhitneyU検定を用いて比較した。倫理的な問題だと思った場面の記述は,内容を分析し,コーディングしながら要素毎にまとめ手術室看護師と外科系病棟看護師とで比較した。その結果,手術室看護師の道徳的感性の特徴の病棟看護師との共通点は,患者理解・信頼関係の構築・患者を安全に守ることの認識は高いことであった。相違点は,手術室看護師は,医師の判断に頼る傾向が病棟看護師より強く患者の気持ちを察知することの感性が低いことであった。また,手術室看護師は,プライバシーの侵害や誤った無菌操作など,誠実でない医療者の行為を倫理的な問題と多く捉えていた。 以上の結果より,手術室看護師は,人間関係の基盤である患者理解の感性を養い,患者の要求や気持ちを察知する感性と患者に情を示すこと,患者に誠実であることで,患者との信頼関係を築き,患者の擁護者としての役割を認識・遂行する必要があることが示唆された。
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