研究概要 |
少子高齢化社会において,働く女性への育児支援として,母親とその家族,家族機能の活性化おいて,祖父母の役割にはどのような意義があるのかを検証することを目的とし,看護職者を対象として調査を行った。祖父母の役割が大いに期待される拡大家族と,祖父母とは別居している核家族とを比較するため,家族形態の差が著明な出雲圏内(以下,地方)と大阪府下(以下,都市部)の双方から結果を得た。 一次調査は地方4施設の看護職者989名と都市部2施設の853名を対象とし自己記入式質間紙調査を行った。地方859名(回収率87%),都市部674名(回収率79%)から有効回答を得,そのうち子育て経験者地方525名(61%),都市部156(23%)の特徴を分析した。子育て経験者の平均年齢は地方42.9歳,都市部45.3歳であった。子ども数の平均は,地方2.3人,都市部1.9人で有意差があった。家族形態は,都市部では核家族68%,地方では義父母同居家族60%,実父母同居家族20%であった。育児休業の取得割合は,地方では子ども数が多くなるほど高く,都市部ではその反対の結果がみられた。育児サポートの比較では,夫のサポートは都市部が有意に高く,義父母,実父母のサポートは地方が有意に高く,地方において祖父母の援助が欠かせないものとなっていた。また家族機能についてFamily Adaptability and Cohesion Evaluation Scale-IIIを用いたところ,育児中の看護職者の家族機能は,家族形態により差があった。特に家族機能の凝集性は,核家族の方が拡大家族よりも高く,地方と都市部においても同様の傾向がみられた。 さらに二次調査として看護職者18名と祖父母3名に面接調査を行った結果,看護職者は育児期間中に十分な家族サポートを受けて仕事の継続をし,一時的な社会資源と家族サポートをうまく組み合わせて育児期を乗り越えていた。また祖父母の生活において孫の存在は生きがいではあるが,世代間伝達により孫育てを当然のこととして祖父母自身の生活の一部に取り入れていた。
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