研究概要 |
本研究の目的は羊水検査をめぐる意思決定過程に,家族成員がどのように関与し,また,その家族成員にはどのような特徴があるかを記述的に明らかにし,羊水検査へのニーズを持つクライエントの自律的な意思決定を支えるケアや,悩みを持つ家族のケアに役立てることである。 平成14年度の計画は1)面接によるデータを収集し,クライエントの意思決定のパターンと家族の特徴や力関係との関連を質的に分析する,2)明らかにされた意思決定パターンと家族の特徴や力関係との関連を通して,クライエントや家族に対するケアモデルを作成することであった。 研究対象者は,羊水検査にニーズを持ち大学病院遺伝外来を受診したクライエントで,本研究の協力に同意した36人であり,面接時間は1人1回30〜50分だった。 1)羊水検査をめぐる意思決定におけるクラィエントと家族の力関係には5パターンがあった。 パターン1は,クライエントの意思が強く,家族に左右されない;パターン2は,クライエントと家族の意思は共通しており,クライエントの思いが家族より強い;パターン3は,クライエントと家族は共通した意思を持ち,力関係に偏りがない;パターン4は,クライエントと家族が共通の意思を持ち,家族がクライエントを積極的に支えている;パターン5は,家族の意思が強く,クライエントの意思より優先されている。 2)各パターンの内訳はパターン1が10人(27,7%),パターン2が4人(11.1%),パターン3が12人(33.3%),パターン4が6人(16.6%),パターン5が4人(11.1%)だった。 3)羊水検査を希望していなかったが検査をしたクライエントは2人おり,パターン5だった。羊水検査を希望していたが検査をしなかったのが8人で,パターン1が2人,パターン3が3人,パターン4が1人,パターン5が2人だった。 4)クライエントの意思や家族の意向を確認することに加えて,クライエントと家族間の力関係をアセスメントし,介入することが意思決定過程を支える上で重要であることが示唆された。
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