研究概要 |
本研究では,相互依存を強めるASEANを抱えて経済成長が著しいアジアと,経済的ブロック化が進み一つの経済圏が形成されつつあるEUを対象に分析をおこなった.分析の結果明ら加こなった点は次のように要約される. 国際的都市システムの形成に大きな影響を与えるのは情報通信である.情報を安価にしかも瞬時に送れるファックスや電子メールなどの通信技術は,迅速な意思決定を要求される企業にとって,情報伝達の強力な武器となった.社会に急速に普及するインターネットは,家庭にも入り込んで,人々のライフスタイルを変えつつある.テレワークなど新しい雇用形態が誕生し,都市居住の構造変容をもたらしている. 情報通信技術の恩恵をもっとも享受しているのが世界都市である.ニューヨーク,ロンドン,東京は世界的金融市場の24時間体制におけるそれぞれ3分の1ずつを担当し,金融市場をリードしているが,それを可能にしているのは高速情報通信ネットワークである.3都市のシームレスな連結が一体的な金融市場を成立させているのである。しかしその一方で,高度な情報ネットワークに乗らない都市と世界都市の間で経済格差が拡大していることも指摘しなければならない世界都市では,社会階層の二極分解,高次サービス機能の急成長,外国人の流入都心への人口回帰など従前には見られなかった現象が顕在化している.このような都市空間の変化は,その都市の自発的発展の帰結とか,国家的都市システム内での役割強化といった内在的要因だけでは説明がつかない.国際的都市システムの中枢結節点に成長し,国外の大都市と社会経済的結びつきを強めた結果である.
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