研究概要 |
昨年度の研究より,児童・生徒にはJIS規格で定められた適正値よりも高めの机・椅子が多く配分され、子ども達も高めのものを好む傾向がみられた。本研究では,学習時の机・椅子の機能に深く関わってくる「差尺(机の高さと座面の高さの差)」に注目し,それを段階的に9回変化させることによって,児童の学習活動をアンケートによる意識調査および疲労度調査を行い,また,授業中の観察をビデオ撮影で行うことで,子ども達が望んでいる差尺の検討を行った。さらに本研究では,従来使用されてきたスチールパイプ製の机・椅子を木製のものにすることによって,児童の特性別諸反応(視覚,触覚,聴覚,臭覚,ストレス関連,安全性等)の変化を明らかにし,木製の机・椅子が児童の教育環境にどのような影響を与えているのか検討を行った。 その結果,椅子の高さを適正値で継続使用した時,机の高さの変化に対して,適応感,好悪感,快・不快感,疲労感,グループ活動の快適感のいずれの評価項目においても机を適正値より2段階高く(差尺は適正値+6cm)設定した場合が児童はプラスの最も良い反応を示した。しかし,机の高さを適正値より1号低く(差尺は適正値-3cm)設定した場合は,前述の評価項目すべてにおいて最も悪いマイナスの反応を示した。また,スチールパイプ製と木製のいずれの場合においても,JIS規格による適正値の机の高さは低いという評価が多く,児童は適正値よりも高めの机・椅子を望んでいることがわかった。また,木製の机・椅子はスチールパイプ製のものに比べて,快適感,接触痛覚感,接触温冷感の評価項目で児童は良い反応を示し,重量感,移動快適感の項目で悪い反応を示した。
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