研究概要 |
唾液IgA濃度,タンパク質濃度および唾液分泌速度の測定条件を確立するために,唾液採取法について検討し,上記成分の日内変動を観察した。被験者は無作為の健常な女子大生10名とし,実験に先立ち口頭にて本研究の主旨を説明し承諾を得た。唾液採取法について,自然分泌唾液の直接採取法およびコットンロール法において検討した結果,採取法による唾液成分への著しい影響は認められなかった。しかし,唾液採取に要する時間および唾液分泌速度測定の点から,コットンロール法がより適当であると判断し,以後実験に伴う唾液採取は,コットンロール法にて行った。また唾液試料は,IgA濃度測定には5000倍希釈,総タンパク質濃度測定には2倍希釈を要することが分かった。日内変動について検討した結果,総タンパク質濃度および唾液分泌速度において大きな変動は認められなかったが,IgA濃度は採取時間による変動が観察された。 グルコース,キシロース,グルシトール,キシリトール,ペクチンおよびグルコマンナン各2.0gずつ摂取させ,上記同様,唾液成分などの変動について観察した。その結果,キシリトール摂取時にのみ,一過性ではあるが唾液IgA濃度の上昇が見られた。次に,キシリトール摂取量との容量応答性について検索するため,キシリトールを0.5-2.Ogの間でO.5g刻みに摂取させ同様の観察を行った結果,2.0g摂取時のみ唾液IgA濃度の上昇が認められた。 さらにキシリトールの継続的な摂取が唾液成分に与える影響について検討した。被験者は二群に分けクロスオーバー試験法で行った。また対照としてグルコースを用いた。その結果,継続摂取による唾液IgA濃度のさらなる上昇は認められなかったが,3週間の継続摂取後にも,一過的な唾液IgA濃度上昇は認められた。 これらの結果より,摂取期間に関わらずキシリトールを2.Og以上摂取した場合,一過的ではあるが唾液IgA濃度が上昇することが示唆された。
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