研究概要 |
近年,AIDS,大腸菌O-157,ブドウ球菌食中毒,薬剤耐性菌による院内感染など伝染性微生物による深刻な感染症/中毒事件が地球規模で次々と発生し,人類にとっての新たな健康上の脅威となっており,この新しい健康課題への対応が急務である.本研究は,近年の感染症流行がもたらす新しい健康課題を解決するため,学校をベースとして,教科,学校と地域,行政などの境界を越えた包括的な健康管理・健康教育システムを構築することを目的とした. 本研究では2年間にわたって調査・収集した我が国及び諸外国の資料を整理してデータベース化した資料をもとに特に下記の3つのモデルを抽出して比較検討し,感染症の新しい動向に対する学校保健のあり方を考察した. 1.WHOによるHealth Promoting Schoolモデル 2.感染症の予防及び感染症患者に対する医療に関する法律(感染症法)」および「学校保健法施行規則改正」による我が国の新しい感染症対策システム 3.学校と外部関連機関,専門家との連携をベースにした健康教育プログラム=「薬物乱用防止教室」モデル WHOによるHealth Promoting Schoolの基本概念と目標は,我が国の学校保健の概念,目標に重なるものであるが,学校を地域社会のHealth Promotionの中核に置き,学校と関連機関の連携,児童・生徒を含めた学校,地域を構成するすべての人々の参加の重視など,より広い視点と柔軟な戦略を持つ点にその特徴がある.そして,その健康管理,健康教育を包括した取り組みは,感染症を含む新しく出現した健康課題を解決するためにも有用なモデルである.一方,学校と外部関連機関,専門家との連携をベースにした健康教育プログラム=「薬物乱用防止教室」と我が国の新しい感染症対策システムとの組み合わせは,Health Promoting Schoolプロジェクトとともに感染症の新しい動向に対する学校を基盤とした包括的健康管理・健康教育システムのモデルとなると考えられる.特に後者は我が国で実現可能であり,今後その有効性の検証が望まれる.
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