研究概要 |
人工衛星合成開口レーダー(SAR)は将来の広域斜面変動観測にも用いられると考えられ,日本政府も情報収集衛星を打ち上げたが,今後集中的に打ち上げを予定している.本研究ではJERS-1衛星データと大規模地すべり地の精密現地観測データとを比較し,差分干渉SARの観測結果を比較し,精度と特性の評価を行う.特に差分干渉処理を用いた斜面変動検出を行い,ミリオーダーで観測が行われている地すべり地での定量的な変位量の比較と精度評価を行っている.本年度は以下の成果を得た. (1)徳島県・善徳地すべり地区を含むシーンについて昨年購入したJERS-1および本年度購入したカナダのRADARSAT衛星のデータについて,軌道間基線長距離を推定し,干渉処理を行った.JERS-1については国土地理院で開発された合成開口レーダー解析プログラム(GSI-SAR)を用い,RADARSATデータについては研究分担者のRAMMERおよび国土地理院のEARTH VIEWを用いた.最終的に得られた基線長データは公表された衛星データ資料とは全く異なることが多いこと,そのため,干渉解析の自動化においては基線長の推定の自動かつ効率的なアルゴリズムの構築が重要であることがわかった. (2)四国山地の急峻な谷間に沿って沈下を示唆する数km程度のブロック状の部分が多数見られるが,谷間に散在する水蒸気の影響であると推定された. (3)善徳地すべりの伸縮計,三次元せん断変位計,GPS連続静止観測の観測資料を整理し変位量分布を比較したところ,特に三次元せん断変位計の横断測線上で破砕帯や地下谷における地下浸食により沈下が卓越している部分で干渉解析した合成開口レーダー画像でも沈下傾向を示しており,斜面変動の検出は急傾斜地においても困難ではあるが可能性があることがわかつた.
|