研究概要 |
例えばDNA等の鎖状高分子の電荷による変形過程などに関して,計算機シミュレーションを通じて,プラズマ物理学的取組みが起ろうとしている.プラズマプロセスの分野では化学結合により発生する微粒子が静電場と重力場の中で構造形成を伴った多様な運動をすることが注目されている.このように電子とイオンにマクロな物体を加えることにより高次の構造形成を議論しようとする内圧がプラズマ物理分野に増えつつある.一方,電子だけで構成される非中性プラズマにおける集団運動と自己組織化過程について,我々は渦現象を軸として研究を始め,近年著しい進展を見た.この活動の中から,閉込めの良い電子の海に包まれた磁性微粒子群が形成する構造体とそのダイナミクスについての興味が生れた. 本年度は軸を垂直に向けたミラー磁場中にMalmberg Trapの配位を持った電子閉込め装置を完成した.微粒子対策として排気は拡散ポンプで行う.到達真空度は4x10^<-7>Torrである.この中に電子をパルス的に入射し,混合と保持を繰り返すことにより,〜300Gにおいて数百msの1/e閉じ込め時間を達成した.この閉じ込め時間は磁場強度に対してほぼ線形的に増加する.2乗依存性で無いところが何によるかは大変興味深い課題である.再現性は大変良好である. 次の課題として直径が0.05ミクロンのニッケル微粒子を導入した.この微粒子を負に帯電させて磁場強度勾配と電場によりトラップ内に浮遊させることが当面の課題である.その観測のため,Malmberg Trapを構成するリング電極は籠状に配置して,磁気軸に垂直な面内で最大25mWの緑色レーザーを入射し,同じ面内での90度に散乱する光の強度分布をデジタルビデオカメラにて時間的に追跡する機構を取り付けた.レーザー光は扇状に広げて,その平面を任意に回転できる構造とした.これらの計測系は整備を完了しすでに稼働中である. 現在背景の電子分布を形成した中に,ニッケル微粒子に100-200eVの電子ビームを照射して負に帯電させてトラップ域に浮上させようと試みているところである.この部分が予想どおり最大の難関であった.その解決には数個の方策を想定しており,順次実行中である.成果は近日中に報告できるであろう.
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