研究概要 |
本研究の目的は,純水中に約150ppm含まれるHDOを二酸化炭素(CO_2)にリン酸トリブチル(TBP)のような添加物を加えることにより,常温,加圧下で抽出し,HDOとH_2Oとの分離係数を測定することで,超臨界流体抽出における重水素の同位体効果を定量すること,同位体効果に及ぼす温度,圧力,添加物の影響を実験的に調べて超臨界CO_2が同位体効果に及ぼす影響を溶媒和の観点から把握することにある.また,トレーサレベルのトリチウム水を用いてトリチウムの超臨界流体抽出における同位体効果についても重水素と同様に定量化することとした.平成14年度は最終年度であり,約450Bq/cm^3のトリチウムを添加した純水を用いて実験研究を行うとともに結果を取り纏めた. TBPを添加物として含む超臨界CO_2でトリチウムを含む純水を抽出する実験を昨年度作製した実験システムを用いて行い,この際に観測されるHTOとH_2O間の分離係数を6〜17MPaで圧力やTBPのCO_2に対するモル比0.05〜0.6で変化させて液体シンチレーションカウンタを用いて測定した.この結果,圧力が低い6MPaでHTO/H_2O間のTに対する最大の平衡分離係数1.148が得られた.この値はHDOに対する値よりも大きい.また,圧力が高い17MPaでは分離係数が小さくなること,TBPの二酸化炭素に対するモル比が小さいほど大きな平衡分離係数が得られることがわかった.これらはHDO-H_2O系と同一の傾向であった. 2カ年間の研究を要するに,超臨界流体中での同位体効果を測定するとともに,同位体効果の大きさを圧力や組成で制御できることを発見し,同位体効果の発現機構としては,TBP水錯体にCO_2が溶媒和してTBPと水との水素結合が弱くなることで説明できることを明確化した.ここで測定された平衡分離係数は水蒸留での値に比較して大きいことも確認した.
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