研究概要 |
本研究では、小胞体における膜蛋白質の構造形成機構について探求した。進展内容は以下のとおりである:(1)小胞体では膜組み込み特性の強いセグメントによって、膜に組み込まれる特性のないポリペプチドセグメントが膜貫通配置を取るというわれわれのモデルを、いくつかの実例でさらに実証し、膜貫通セグメントの「他律的配置(autonomous positioning)」と命名した(Sakaguchi, BBRC,2002;Ukajiら,BBRC,2002)。タンパク質のフォールディングにおいて、他のセグメントの立体配置決定によって特定のセグメントの配置が他律的に決定されてしまうことを明確に示したものである。(2)膜貫通セグメントが他のセグメントと極性または電荷間相互作用することによって膜内に組み込まれることを、2例(ヒト赤血球バンド3および植物カリウムイオンチャネル)について実証した(Kankiら,Biochemistry,2002;SatoらPNAS,2002;Satoら,JBC,2003)。これで、疎水性セグメントが自発的に組み込まれるモード、疎水性の不十分なセグメントが他の疎水性セグメントの組み込みに伴って強制的に組み込まれるモード、および極性相互作用による膜組み込みモードの全てを実験的に示すことが完了した。(3)本研究の主題であるロドプシンについては、培養細胞での3種の発現条件を設定し培養細胞系で発現させることに成功した。最も発現量の多かったCOS細胞とCMVプロモーターの組み合わせでも、発現したタンパク質の大半がN-結合型糖鎖付加を受けていることがわかった。この系を用いて各ヘリックス間パッキングをモニターすることとした。(4)ついで、2箇所にシステインを導入した変異ロドプシンの系統的な作成にとりかかっている。ジスルフィド結合形成による電気泳動上の移動度の差をモニターする系を作成中である。
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