研究概要 |
マイクロカプセルを用いたDDSにおいて,カプセルに付加した薬剤が効率よく細胞内に取り込まれるよう超音波の照射条件を最適化し,カプセルの破壊を制御するには,マイクロカプセルなどの微小気泡の存在が細胞への薬剤取り込みを促進するメカニズムを明らかにする必要がある.そこで本年度は,下記の2点に関する検討を行った. 1.細胞と気泡の相互作用の高速度観察 前年度に行った高速度観察から,気泡が急速に収縮する際に微小な流れが発生し,これが気泡の崩壊の原因になっていることが示された.そこで本年度は,このような気泡のふるまいが細胞に作用を与える可能性に関する検討を行うために,培養した血管内皮細胞を用いて,細胞と微小気泡の相互作用の高速度撮影を行った.その結果,細胞の近傍に気泡が存在する場合に,明らかに気泡のふるまいに同期した細胞の変形が観察された.これは,気泡が存在しない場合には,超音波のエネルギは細胞にほとんど作用を及ぼさずに透過してしまうが,気泡が存在する場合には,超音波のエネルギが一旦気泡の運動エネルギに変換され.気泡のふるまいにより2次的に細胞が作用を受けているものと考えられた. 2.Sonoporation(細胞穿孔)のメカニズムの解明 高速度観察では,細胞の変形は観察できるものの画質が低く,細胞が受ける作用を詳細に観察することができなかった.そこで,パルス超音波照射下において気泡のふるまいが細胞膜に与える作用を高い感度で検出できる蛍光顕微法を用いて観察を行った.その結果,気泡が存在すると明らかに細胞膜が損傷を受ける確率が増大すること,損傷を受ける部位が気泡の崩壊が起きた部位と一致することが確認され,気泡のふるまいによる機械的な作用がSonoporationの発生機序の一つと考えられた.
|