研究概要 |
本研究は、現在可視光観察のみにより行われている内視鏡下手術にて,使用する電子的な撮影系が人間の目には見えない近赤外光に感度を有することを利用し,組織背部より生体組織透過性が良く,また血液による吸収が大きい近赤外光で照明し,組織内部の肉眼では検知できない組織内部の血管位置を同定し,内視鏡下手術をより安全に行おうとするものである。本年度は前年度までの結果をもとに実際の臨床使用を想定し,直径10mm程度の腹腔鏡下手術用トロッカを介して,腹腔内に挿入可能な近赤外LED光源を試作して評価した.本光源は組織内部の血管の位置同定のみを目的とし,動静脈の弁別は行わないこととした.前年度の検討結果より血管が鮮明に観察可能であった波長950nmのLEDを使用し,光源を臓器背部に挿入し,内視鏡側に向かって組織を照明することが容易にできるように,先端が90度まで屈曲可能な鉗子にLED光源アレイを設置した.ブタ肝臓を使用した動物実験では,肝臓などの臓器裏側に光源を挿入する操作が試作した光源付き鉗子により容易に行えることを確認した.また肝臓を使用して,赤外光が透過する肝臓の厚みを6.1mmから10.7mmと変化させ,得られた血管透視像を赤外線カメラで計測した.前年度の基礎検討で示されたように厚み10mm程度の厚みの組織を介して赤外光が透過し,内部の血管を描出できることを確認した.しかしながら10mmを越える厚みを有する肝臓組織の透過像では,血管像の鮮明度が失われた.今後は臨床評価にむけてシステムの改良を行う予定である.
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