研究概要 |
本研究は, 事前の地理空間情報と高分解能SAR衛星画像を組み合わせた都市モデルの構築と, これらに災害発生後の高分解能SAR衛星画像を組み合わせた被害抽出手法を開発し, 事例解析によりその精度を検証することを目的としている。具体的には, 事前の3Dモデルのデータベースを作成し, 地震などの自然災害が発生した直後では, 構築された都市モデルと事後に得られたSAR衛星画像を組み合わせて, 建物被害や地殻変動などの被害を抽出する。本年度では, 2011年2月11日に発生したニュージーランドのクライストチャーチ地震と2013年11月7日にフィリピンを襲った台風ハイエンを対象とし, 地盤被害と都市被害の検出を行った。 クライストチャーチ地震に対して, 地震前後に撮影したAOS/PALSAR画像とTerraSAR-X画像を用いて差分干渉処理で断層活動による地殻変動を検出した。上昇と下降軌道で検出された衛星観測方向における変位量を組み合わせることで, 水平と鉛直方向における変動量の推定を行った。GPSキャンペーンデータと比較すると, 概ね一致の傾向が得られた。また, 検出された地殻変動量を用いて, 地震断層モデルの推定も試みた。さらに, 位相の相関を表すコヒーレンスと推定された沈下量を用いて, 都市域における液状化地域の抽出を行った。 台風前後のCOSMO-SkyMed画像を用いて, フィリピンのタクロバン市周辺における建物被害の抽出を行った。台風前後の画像から都市域を表す係数を算出し, 台風で全壊した地域を特定できた。また, 3時期の画像間のコヒーレンスと光学画像から判読した建物被害レベルを比較し, 高解像度SAR画像から建物1棟単位における被害判定を試みた。
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