研究実績の概要 |
本研究の目的は、今日、世界的に展開されている中国系の人口移動をめぐるマクロ構造的な諸要因とミクロ構造的な諸条件の間の複雑な相互作用を明らかにすることにある。中国系の人口移動システムは"Chinese Exchange" (Miyahara, 2014)と "Chinese World System" (Pieke, 2002)という二つの競合する概念を通して表現し得る。 居住地域を中国系移民にとって快適な空間に変容させていく過程としての"Chinese Exchange"、あるいは中国系の人口、情報、資本、思考の移動をめぐるChinese World Systemの全貌を理解するためには、地道な微視的研究の積み重ねが不可欠である。 本研究では、日本における中国系移民に関する民族誌的調査を実施し、1)組織的条件と家庭的実践の間の関連性、2)移民の労働戦略に関連した家族的実践、3)中国と日本の間での子供製品に関する流通の実態を明らかにした。またこうした民族誌的調査にもとづき、異なる政治的、社会的、文化的条件がどう家族生活のあり方に影響を与えるかについて検討し、日本における中国系移民の家族生活と微視的な移動をより広範なChinese ExchangeおよびChinese World Systemと関連させつつ分析した。 民族誌的調査の結果については、国際人類学民族学会の分科会での報告、および大阪大学グローバルコラボレーションセンターでのセミナーにおいて報告した。中国系人口移動をめぐるマクロ構造的な諸要因とミクロ構造的な諸条件の間の複雑な相互作用に関しては、平成27年6月に開催される国際会議「MOVEMENTS, NARRATIVES, AND LANDSCAPES」(University of Zadar, Croatia)において報告を行う予定である。
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