研究課題
特別研究員奨励費
PM2.5に代表される大気降下物には、窒素やリンのような湖沼生態系に大きな影響を及ぼす栄養塩が含まれている。こうした大気降下物の近年の増加に伴って、山岳湖沼生態系がどのように変化してきたのか、その長期記録を明らかにしてどのような湖が特に脆弱であるのかを調べたい。特に、日本の淡水湖沼珪藻群集に影響を及ぼす要因を考えることは、その湖の脆弱性の主要な要因がどの環境要因であるかを特定する上で有用な情報を提供してくれる。現在注目している湖は、集水域に森林を持つ湖沼と湿地を持つ湖沼である。湿地は、腐植酸による栄養塩吸着や植生による栄養塩吸収によって湖への栄養塩負荷を軽減させる可能性がある。一方で森林は、湿地よりも大気からの栄養塩の降下量を促進しやすく、湖への栄養塩流入も比較的速いことが予想される。そこで、栄養塩負荷に対する集水域タイプの違いによって、湖の栄養塩濃度の変化の違いがある可能性がある。平成26年度は、立石池と小田の池を対象に湖沼堆積物の年代測定及び珪藻群集組成分析を行った。小田の池では、1971年,1983年,2005年ごろに大きな変化が認められ、特に1983年の変化は,栄養塩の増加を示唆する珪藻群集へと変化していることが注目される。立石池では,1963年頃,わずかな珪藻群集変化が認められ,このころより水質がよりアルカリ性に変化したことを示唆している。これは、富栄養化に伴う湖水のCO2濃度の減少にともなって湖水がアルカリ性へと変化したことを示す可能性がある。有機物及び鉱物組成の変化も、珪藻群集から裏付けられる富栄養化と調和的であった。今後、ランドサット画像解析等を用いて、集水域変化が両湖沼に与えた影響を考慮し、二つの湖沼タイプで大気経由の栄養塩負荷による影響にどのような違いがあるのかを詳しく検討する。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Science of the Total Environmen
巻: 442 ページ: 189-197