研究課題
特別研究員奨励費
当該研究員は、済州島周辺で採取できるコンブ科のカジメ(Ecklonia cava)に含まれる有効成分の生体における有用な効能について研究を進めてきた。その解析の過程で、カジメ抽出物が抗酸化作用のみならず、免疫調節作用を有することを見いだした。この有効成分は、昆布に代表される海洋性褐藻類から新たに見つかったポリフェノールの一種であるフロロタンニンであり、とくにフロロタンニンのひとつであるdieckolには免疫調節による抗アレルギー効果が期待されている。そこで本研究ではヒトの喘息モデルとしてマウスにI型の呼吸器アレルギーを誘導し、フロロタンニンの抗呼吸器アレルギー効果を検討した。具体的には以下のような流れで、前臨床試験を実施し実用化を目指した基礎研究を遂行した。①海洋性褐藻類から抽出したdieckolの免疫系細胞活性化抑制効果の検証in vitroの実験系を用いて、細胞の増殖と分化に対する抑制効果を検討、あるいは細胞からサイトカインのタンパク質とmRNAの発現への影響を検討した。dieckolは、マウスの骨髄から誘導した肥満細胞の、IgE介在性の脱課粒を抑制した。また、Flow cytometry法によりIgEの結合を阻止することが明らかとなった。この時、Th2型炎症性サイトカインの産生も抑制することを確認した。②卵白アルブミン(OVA)が誘導性I型気道アレルギーに対するdieckolの緩和メカニズムの検討卵白アルブミン(OVA)によって誘導した気道アレルギーに対するdieckolの効能およびそのメカニズムを解析した。dieckolの気道アレルギー抑制効果を検討するために、OVAで誘導したマウス喘息モデル由来の気管支肺胞洗浄液(BAL)へ浸潤した炎症性細胞の種類および数と、BAL中のサイトカイン量などを測定したところ、dieckolをあらかじめ投与したマウスでは、BAL中に検出される炎症性細胞数が減少した。検出される細胞の中でも、アレルギー炎症を示す好酸球数が減少した。また、BAL中に含まれるIL-4やIL-5などのTh2型サイトカイン量が減少した。
2: おおむね順調に進展している
計画していた平成25年度の研究内容はほぼ実行し、有用なデータを得ることができた。
平成26年度は、家ダニ抗原により誘導する皮膚および気道アレルギーモデルを作出し、dieckolの有効性を明らかにする予定であったが、外国人特別研究員が就職(全南大学・助教)のため帰国したため、研究の継続は難しくなった。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
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http://www.tuat.ac.jp/~mol_path/