研究課題/領域番号 |
13J00027
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
構造・機能材料
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
小山 元道 独立行政法人物質・材料研究機構, 環境・エネルギー材料部門 材料信頼性評価ユニット, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2013
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研究課題ステータス |
完了 (2013年度)
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配分額 *注記 |
1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2013年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | 水素脆化 / 高強度鋼 / オーステナイト / 電子チャネリング / 変形双晶 / ケルビンブロープ / κ炭化物 / 水素チャージ下引張 |
研究概要 |
本研究の目的は、水素脆化機構解明の実験指針および耐水素材料の設計指針を確立することである。Scanning Kelvin Prove Force Microscope (SKPFM)で水素分布の測定、Electron Channeling Contrast Imaging (ECCI)でバルク体の金属組織観察をし、これら結果を総合して考察することで、金属組織および水素の分布を相関付けて水素脆化機構を理解することを第一段階の目標とした。 対象材の一つはTwinning-Induced Plasticity (TWIP)鋼と呼ばれる高強度オーステナイト鋼を選択した。ECCIにより、水素助長亀裂は粒界だけでなく、変形双晶界面にも生成、伝播することが明らかとなった。変形双晶界面において亀裂が発生した理由は、双晶界面上における応力集中が原因である。また、変形双晶において水素の偏在がSKPFMにより観察された。すなわち、変形双晶が存在する高強度鋼では、双晶界面上の応力集中および水素偏析が水素脆化発現に重要な役割を持っており、オーステナイト鋼ベースの耐水素材料を設計する場合には、変形双晶の抑制または、変形双晶上の水素偏析を避ける必要があることが、本研究によって明らかとなった。 上記、ECCIおよびSKPFM観察によって明らかにされた事実に基づき、近年、高降伏強度、商引張比強度、高均一伸びを顕微するκ炭化物強化型オーステナイト鋼の水素脆化特性および機構を調査した。本鋼では変形双晶が現れないのでTWIP鋼よりも優れた耐水素脆化抑制が期待されたが、本鋼の優れた機械的特性の原因である特定すべり面におけるひずみ集中に起因して、水素助長亀裂が観察された。この亀裂を起点に、水素が本鋼の機械的特性を著しく劣化させる。これら事実はECCI観察によって明らかにされた。つまり、耐水素高強度オーステナイト鋼を設計する場合には、変形双晶および特定すべり面上におけるひずみ集中に頼らない合金設計が求められる。 本研究により、ECCIおよびSKPFM観察が水素脆化機構解明に有効であることが明らかとされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度計画されていた、SKPFMおよびECCI法の水素脆化研究への適用に成功し、下記4報の論文に加えて、他3報を近く論文発表の予定である。 また、先進高強度鋼のκ炭化物強化型オーステナイト鋼の水素脆化発現も、本研究が明らかにした。この研究でもECCI法の有効性を示し、今度のSKPFMおよびECCI法の利用の足掛かりとなる研究成果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
本年度にて、就職にともない特別研究員PDの身分を辞退するため、主テーマが変更になる。しかし、本研究で得られた知見を活かして、高強度鋼水素脆化の研究を今度遂行する。
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