研究実績の概要 |
読みの獲得や障害は音韻と密接に関連していると言われているが、日本語においては音韻論の知見をふまえた読みの研究は少ない。本研究の目的は音韻論の知見に基づいて、読みの障害と獲得について明らかにすることである。 今年度の研究については、以下の通りである。読みの障害および獲得と非語の復唱能力との関係性が示唆されている。本研究では、定型発達における読みが未熟な幼児 (逐字読み群) は読みが熟達している幼児 (流暢読み群) よりも非語の復唱の成績が低いかどうか、誤用の特徴にも違いがみられるのか、を検討した。この結果をまとめたものを、特殊教育学研究にて発表した。 さらに、非語の復唱の困難さについては、読み困難児における非語の復唱の特徴を明らかにするために、幼児期の逐字読み群および流暢読み群の成績 (迫野・伊藤, 2015) と比較検討を行った。この結果について、第60回日本音声言語医学会総会・学術講演会にて報告した。 また、読みの障害や読みの獲得段階における未熟さをもつ場合、語の音韻構造の影響を受けやすいと予測される。そこで採用1年目より、学齢期の読みに困難をもつ児童が、定型発達における読みが未熟な子どもと同様の特徴を示すのかどうかについての検討を行っている。今年度は、読み困難児の読みと音節・モーラとの関係について検討を行った。この結果について、第53回日本特殊教育学会大会で報告した。さらに読み困難児の読みに及ぼすアクセントの影響について、研究結果をまとめ、英語論文を投稿した。 近年、読みの獲得及び障害と音韻との関係について分節的側面に加えて韻律的側面からの検討が行われている。本研究では、幼児の単語の読み誤りの変化の特徴を、分節的側面と韻律的側面に着目して縦断的に検討を行った。この結果について、第41回日本コミュニケーション障害学会学術講演会において報告した。
|