研究課題
特別研究員奨励費
2次元可積分系について、昨年度に引き続き代数的場の量子論の観点から研究を行った。本年度は作用素の定義域に関する部分的な結果を公表したほか、複数の種類の粒子を含むモデルについても物理量の候補となる作用素を与えた。2次元時空では、楔形領域に局所化された物理量を構成し、それがよい性質を満たせば、場の量子論のモデルである Haag-Kastler ネットが構成できることがわかっている。束縛状態がある可積分な場の量子論の散乱行列の候補が与えられたとき、それを正しく散乱行列として持つ Haag-Kastler ネットを構成することが本年度の目標であった。私が昨年度までにスカラー場の量子論に対して構成した楔形領域の物理量の候補は、束縛状態をつくる作用素(以下ではこれを束縛状態作用素と呼ぶ)を含んでおり、これは物理量ごとに自然な定義域が異なっている。そのため、強可換性の証明が容易でない。本年度は、この強可換性の証明のための部分的な結果を公表した。具体的には、まず束縛状態作用素の 1粒子部分空間への作用を調べ、その自己共役拡大を分類した。これらの自己共役拡大のうち、共変性や、スペクトルの正値性など、よい性質をもつものがひとつあり、これをHilbert 空間全体に自然に延長するのが今のところうまく行く可能性が高いと考えている。実際、物理量の候補の共変性、拡大された定義域での弱可換性などを示すことができた。さらに、強可換性を示すためには、左と右の楔形領域に対応する束縛状態作用素の和が自己共役であれば十分であることがわかった。この自己共役性は現在のところ粒子数が2までの部分空間で示されている。この他に、 Haag-Kastler ネットの構成に必要な Bisognano-Wichmann property や modular nuclearity と呼ばれる性質も、上の強可換性を仮定すれば従うことが期待されている。この他、上の構成法をスカラーでないが散乱行列が対角的な場合に拡張した。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 3件、 招待講演 9件) 備考 (3件)
Commun. Math. Phys.
巻: 340, Issue 2 号: 2 ページ: 661-697
10.1007/s00220-015-2448-z
Forum of Mathematics, Sigma
巻: 2
10.1017/fms.2014.16
巻: (印刷中)(掲載確定)
Annales Henri Poincare
http://www.mat.uniroma2.it/~tanimoto/
http://www.theorie.physik.uni-goettingen.de/~yoh.tanimoto/works.html
http://www.theorie.Physik.uni-goettingen.de/~yoh.tanimoto/works.html