研究実績の概要 |
本研究の目的は, 大きく不足している超高層大気下部の大気組成データを飛躍的に増大させる事, 系統的な理解が得られていない大気組成の分布・変動の基本過程を解明する事である. 平成26年度(採用2年目)は, 昨年度に開発した波長可変ライダーを定常観測用に整備し, 複数大気組成をカバーした日本国内集中観測(定点観測)を実施した. カリウム原子(K)層, 鉄原子(Fe)層の観測に続き, カルシウムイオン(Ca+)層の初観測にも成功し, 計3種の大気組成の定常観測を無事にスタートさせた. 現在は集中観測データの解析ソフトウェア開発とデータ初期解析を進めている. 並行的に過去データの収集・解析を進めた. 南極域で初めてとなる熱圏ナトリウム(Na)層を発見するなどのユニークな研究成果が得られており, 学術論文として科学誌に投稿中である. また, 定点観測データを補完しながらグローバルな大気組成変動を調査するため, 人工衛星データの活用に着手した。Na人工衛星データについてはスウェーデンのグループ(データPIのグループ)と共同研究を開始し, データ解析を進めている. Kや金属原子イオンの人工衛星データについてはデータ利用について調査・交渉を進めている. 本研究課題は(就職のため)平成27年1月末で終了したが, 上記のようにデータ収集は順調であり, 今後のデータ解析を経て重要な研究成果が得られていくと予想する. 以上に加えて, 熱圏・電離圏(高度100-1,000 km)を観測するための次世代ライダーシステムについて数値シミュレーションをベースに基礎検討を行い, 将来のライダー開発の方向性についての議論も進めた.
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