研究員は本年度、Weberの問題、及び、Coates予想に関わる研究を行った。 まずは、有理数体上の場合を扱った。一般の素数pに対して、有理数体の円分的Z_p-拡大体という、岩澤理論において現れる最も基本的な拡大体を考える。このとき、研究員は前年度までに、円単数のある高さを計算することで、pとは異なる素数ℓが有理数体の円分的Z_p-拡大体のすべての中間体の類数を割らないための十分条件を与えていた。これに対し、本年度は、素数の有限集合Sを考え、Sに含まれるすべてのpに関する円分的Z_p-拡大の合併体、有理数体の円分的Z_S-拡大体の場合の研究を行った。この揚合にも、対応する円単数の高さを計算することで、上述の結果の拡張を得た。 上で述べたような研究は、有理数体に限らず、"円分的"Z_S-拡大体の場合には様々な研究者によって研究がなされており、多くの結果が知られている。だが、円分的ではないZ_S-拡大体に対しては研究がなされていない。そこで次に、ガウスの数体上の円分的ではないZ_S-拡大体の場合の研究を行った。素数pを、4を法として1と合同なものとし、Eを楕円曲線でガウスの整数環に虚数乗法を持つものとする。このとき、pはガウスの数体上で分解し、二つの素イデアルP、P'の積になる。ここでEのPベキ等分点をガウスの数体に添加した体の部分体として、"P-外不分岐"と呼ばれる、特別なZ_p-拡大体を得ることができる。また、その合併体としてZ_S-拡大を同様に定義する。このとき、楕円単数のMahler測度を計算することで、このZ_S-拡大に対しても上述の結果の類似の結果を得ることができた。
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