研究課題
特別研究員奨励費
東南極セール・ロンダーネ山地に産する、片麻状構造を切るように発達するザクロ石―角閃石脈を含むザクロ石―斜方輝石―角閃石片麻岩を用い、脈形成に伴う物質移動および鉱物組成・組織変化過程を調べた。本試料では、黒雲母と角閃石の塩素濃度および角閃石中のK濃度が、脈の中心から離れるにつれて徐々に減少し、数cm離れると濃度一定になるプロファイルが観察され、斜長石のNaに富むシャープなリムのモードが脈から離れるにつれて減少する。さらに脈直近の壁岩にはLi,Cu,Rb,Ba,Pb,Uが添加されており、これらの元素はメルトやH2O流体では動かず、アルカリ元素と塩化物を含む流体で動くと実験的研究から既に示されている。以上から、本試料のザクロ石―角閃石脈は、塩水流入で形成されたと考えられる。加えて、脈直近の壁岩に添加されていた元素の鉱物局所微量元素分析を行ったところ、脈からの距離に応じて徐々に濃度が減少し、脈から数cm離れて濃度一定となることが分かった。濃度一定となる距離は、鉱物種によらず元素種によって異なる。また、斜長石粒子(粒径数100μm)の微量元素の組成ゾーニングは、1粒子内でほぼ均質で、脈からの距離に応じて濃度変化することが分かった。斜長石のシャープなリムは、粒界に流体が存在し、界面溶解―再沈殿プロセスによるリム形成を示唆する。これは粒界に塩水が浸透し、脈からの距離に応じた微量元素濃度変化が粒界を主経路として起きたことを意味する。さらに、斜長石1粒子内のゾーニングは、NaSi-CaAl相互拡散係数および微量元素の結晶内拡散係数の違いによって説明できる。本試料において、塩素に富む含水鉱物と、シャープな斜長石リムが共存する領域は、粒界に塩水が流入した証拠と考えられ、この微細組織は、塩水活動を示す痕跡として、他試料にも適用できると考えられる。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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