原子核においてこれまで調べられてこなかった新しいいくつかの変形の存在が、平均場理論に基づく計算により示唆されている。それらのエキゾチック変形の一つである四面体変形をした状態は、特定の陽子数または中性子数の原子核の安定な変形状態となると考えられている。 昨年度、原子核構造で広く使われており信頼性の高いGogny相互作用を用いた量子数射影計算の数値計算プログラムを作成した。そのプログラムを用いて四面体変形した状態が非常に大きな相関エネルギーを稼ぐことを調べていたが、本年度はその研究を更に進め、この大きな相関エネルギーが複数のZrの同位体で見られることや四面体変形に限らず他の八重極変形でも同程度の相関エネルギーがあることを新たに示した。これらの結果を論文としてまとめた。 また、本年度は新たに、異なる角速度の状態を重ねあわせて量子数射影する計算を、共同研究として行っている。この計算手法では角運動量の高い状態において、系の内部状態が変化する効果を計算に取り入れることができ、一つの角速度の状態を量子数射影した場合に比べてより信頼性の高いエネルギースペクトルが得られると考えている。現在はエキゾチック変形ではなく、軸対称な回転楕円体変形でその有効性を確かめている段階であるが、手法が確立すればエキゾチック変形のエネルギースペクトルをより正確に計算することも可能となる。軸対称な回転楕円体変形の計算は現在論文にまとめて投稿中である。
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