研究課題
特別研究員奨励費
本研究の主な目的は、西洋の思想、とりわけ言語をめぐる思想を、ラカンが「症状」と呼んだ現象を規準にして読み直すことにある。言語をめぐる思想を「症状」を規準に読み直すとは、言語の原点、言語を可能なものとしている条件は「症状としての言語」であり、これまでの西洋の言語思想は、この「症状としての言語」を捉えようとする格闘の歴史だったのではないか、という仮説のもとに思想史を再解釈することである。研究最終年度は、近現代の言語思想を対象とし、その中で「症状としての言語」を把握しようという試みを抽出する作業をおこなった。この作業の中で、啓蒙期に流行した言語起源論を「症状としての言語」を仮想的な歴史の中に投射しようとした試みとして、また、フェルディナン・ド・ソシュールの転回、すなわち構造主義的言語論から後期のアナグラム研究への転回を「症候」としての言語の理解から「症状」としての言語の理解への変化として、解釈した。更に、ジャック・デリダの「グラマトロジー」や「痕跡」といった概念、および、エマニュエル・レヴィナスが「顔」を「語られたこと(症候)」からは区別された「語ること(症状)」対応させていることを考慮するとき、そうした「顔」もまた、症状論の文脈で再解釈された。このように本研究は、「症状」という観点を導入することで、西洋思想史に関して、これまでの研究の中では見えてはいなかったひとつの線を素描することができた。今後、本研究で得られた成果をもとに、更なる発展的継続が期待される。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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GRADIVA- Revue Europeenne d’Anthropologie Litteraire
巻: printemps