研究実績の概要 |
本研究の目標は、UCoAlの強磁性臨界現象の性質を明らかにすることである。昨年度はUCoAlに対し、一軸圧下での核磁気共鳴(NMR)を行ったが[K. Karube et al., JPSJ 83, 084706 (2014).]、本年度はFe置換を制御パラメータとして、核四重極共鳴(NQR)測定を行った。 東北大学金属材料研究所アルファ放射体実験室にて作成したU(Co1-xFex)Al (0 < x < 0.02)の多結晶粉末試料に対し、ゼロ磁場中で59Co核サイトのNQR測定を行った。その結果、NQRスペクトルから、x = 1%以上のFe置換試料において、シャープな常磁性スペクトルに加え、ブロードな強磁性スペクトルが出現することを確認した。特に、常磁性スペクトルに連続的なシフトは観測されず、強磁性スペクトルと相分離(共存)していることから、強磁性転移は二次転移ではなく、一次転移であることを確認した。また、c軸方向の磁気ゆらぎの情報を引き出す核スピン-スピン緩和率1/T2にはT = 20 Kに異常が観測され、xを大きくするにつれ異常の大きさが増大していくことを観測した。これらの結果を (T, x) 相図上にまとめると、Yamadaらによる理論的予測と定性的に一致し、三重臨界点の存在とその近傍での磁気ゆらぎの発達を強く示唆する結果となった[K. Karube et al., PRB 91, 075131 (2015).]。また、x = 2%の粉末試料を磁場中で配向させながらスタイキャストで固めた試料に対して、27Al核サイトのNMR測定も行った。その結果、上記のNQRの結果と同様、Fe置換による一次の強磁性転移と強い磁気ゆらぎの存在を示す結果を得た。
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