研究概要 |
本研究は, 付加体内, プレート境界断層の地震時の断層滑り挙動を明らかにし, プレート沈み込み帯における断層滑りの体系化を行うことを目的としている. 平成25年度は, 陸上に露出する過去の沈み込み帯深部に発達する断層の同定と試料の採取, 組織観察を行った. 対象として, 付加体中の巨大分岐断層の地震発生帯に相当すると考えられる, 九州・延岡衝上断層近傍に発達するシュードタキライトに注目した. この断層試料に対して, 電子顕微鏡を用いた詳細な観察に加え, X線CT (XradiaVersaXRM-500)を用いた三次元的な構造解析を行った. 電子顕微鏡観察では, シュードタキライトの周囲に, 断層に沿って発達する炭酸塩鉱物脈が確認された. また, シュードタキライト中に母岩フラグメントが下盤側に偏在することを確認した. また, シュードタキライト中にはフラグメントの配列に沿うようなオープンクラックも見られるが, これは急冷環境下におけるクーリングクラックの可能性がある, また, シュードタキライト断層の三次元X-CT画像の撮像は円柱状に切り出した試料に対して行われた. X線顕微鏡の空間分解能は1μmほどと極めて高解像度であり, 詳細な三次元の断層像が得られた. このCT画像から断層沿いの鉱物脈およびシュードタキライトの表面を抜きだし, その凹凸の情報を算術平均粗さ(Ra)に変換し, 定量した. これらの構造情報から, このシュードタキライトは, 1. すべりの開始とともに下盤側に歪みが集中し, 破砕と摩擦発熱に伴う温度上昇がおこる 2. 発熱による間隙水圧の上昇から, 母岩に熱水が貫入3. これにより有効応力が回復し, 摩擦熔融に至るという, 一回の地震における断層すべりの詳細を推定した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は, 研究成果の公表を進めるとともに, 対象断層を広げ, 付加体全域, 沈み込み帯全体において同様の解析を実施し, そのすべり挙動の全域での把握を行う予定である. 対象とするのは南海トラフ巨大分岐断層深部, またその陸上アナログとして鹿児島県種子島に発達する断層を計画している. また, より精度の高い断層パラメータ解析のため, 断層沿いにおける物質変化の詳細を室内実験において明らかにする予定である.
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