研究概要 |
水素+シクロペンタン(CP)混合ハイドレート系において、CPの量・圧力・温度・加圧時間・冷却時聞を変化させて調製した混合ハイドレートに対して粉末X線回折測定およびラマン分光分析を行い、ハイドレートの結晶構造および各ゲスト分子の成を明らかにした。気体の貯蔵量を増加させるにはCPの量および圧力が重要であることがわかった。水素+テトラヒドロフラン(THF)混合ハイドレート系と同様の傾向が見られたことから、第二成分の水溶性は水素包接量やハイドレートの熱力学的定性にはほとんど影響しないことがわかった。 さらなる実験として水素+メタン混合ハイドレート系において同様の実験を行った。本系の場合、それぞれのゲスト分子の大きさに差がないため大小のケージを完全に棲み分けて占有せず、複雑なケージ占有性を呈することが明らかとなった。用いるメタンの量によって結晶構造が変化し、水素貯蔵に有利な結晶構造は限られた組成・圧力条件を満たした場合のみ生することを見出した。加圧時間によって結晶構造が異なることから、混合ハイドレート内での水素の拡散メカニズムを明らかにした。 メタン+エタン+1,1-ジメチルシクロヘキサン(DMCH)混合ハイドレート系において同様の実験を行った。本系では上記のようなパラメータの変化による結果の大きな違いは見られなかったことから、DMCHが形成する特殊な結晶構造ではケージ占性の大きな変化は起こらないことが明らかとなった。 さらなる実験としてDMCHと同じ結晶構造を形成する1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(HFCP)を用い、メタン+HFCP混合ハイドレート系の相平衡測定を行い、熱力学的安定性を明らかにした。この特殊な結晶構造は高圧・高温条件では非常に不安定と考えられてきたが、本系では高圧・高温まで優れた安定性を持つことを見出した。
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