研究概要 |
本研究は, 移動境界流れの工学的に重要な一例として, 昆虫や鳥に見られる羽ばたき飛翔に注目し, 羽ばたき運動による揚力発生機構および飛行安定化機構の解明と超小型飛翔体(Micro Air Vehicle, MAV)への応用を目的としたものである. この目的の一環として, 「翼の柔軟性や形状を無視した単純な翼モデルで, どれほどの揚力や推力が得られるか, どのようにして姿勢を崩さず飛翔を続けることが出来るか」という疑問を出発点にして研究を行った. 単純な翼モデルとして, 2枚の正方形翼と一本の棒状の胴体を持ち, 実際のチョウの羽ばたき方を模した, 3次元翼モデルを構築した. そして, この翼モデルによる揚力・推力発生と飛行安定化について, 埋め込み境界―格子ボルツマン法を用いた数値計算を通して調べた. まず, 翼モデルの胴体が固定されている場合に発生する揚力・推力を50≦Re≦1000の範囲で計算した. また, その揚力によって支持可能となる質量を見積もった. 次に, 翼モデルの胴体が並進運動する場合の計算を行い, 重力に打ち勝ち飛翔可能となるReynolds数と質量の関係を明らかにした. さらに, 実際の昆虫の条件でも重力に打ち勝ち飛翔できることを示した. 最後に, 翼モデルの胴体が並進だけでなく回転もする場合の計算を行い, ピッチング角の増加によって翼モデルは姿勢を崩し, 安定して飛翔できなくなるものの, 実際のチョウのように胴体を折り曲げることによって, ピッチング角の増加を抑え姿勢を崩すことなく継続的に飛翔できることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1. 採用者の所属している研究グループ内で活発な議論を行い, 多くの有益な意見を得たため. 2. 学会に参加し, 他分野の研究者と活発な議論を行い, 多くの有益な意見を得たため. 3. 当初の計画より長い時間, スーパーコンピュータを使用できたため.
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今後の研究の推進方策 |
今年度(平成25年度)の研究実施状況は, 当初の計画よりも進んでおり, 想定した以上の成果が得られた. 採用者は, 平成26年3月31日に特別研究員を辞退しているものの, 来年度(平成26年度)からは信州大学の助教として, この研究を発展させていく予定である, 具体的には, 数値計算を通してより簡易な位置・姿勢制御法を考案し, 最終的には実際の超小型飛翔体(Micro Air Vehicle, MAV)の作成を目指す.
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