研究課題
特別研究員奨励費
近年,企業の生産プロセスでは,粉体の微細化に伴う付着凝集性に起因する操作上の問題が増加しており,微粒子を対象とした粉体操作の基盤技術の確立が急務となっている。粉体の代表的な機械的輸送方法として,傾斜振動トラフによって粒子を跳躍移動させる振動輸送が産業で広く用いられている。しかし,そのほとんどが数百ミクロン以上の比較的流動しやすい大きな粒子で構成された粉体層の大規模な輸送を対象にしており,重力よりも付着力や流体抵抗が支配的になる微粒子を対象とした微量精密輸送に着目した基礎研究はほとんど行われていなかった。今年度は,粒子の精密振動輸送について,従来ほとんど解明されていない付着凝集性の強い微粒子を対象に実験的および理論的研究を行った。主な研究成果は次の通りである。平板に付着した粒子に十分な強度の傾斜振動を加えると,粒子は平板から分離して跳躍を繰り返すが,平板に対して接線方向に外力を加えると粒子は回転し始め,これに伴って,粒子・平板間相互作用力が著しく低下するので,比較的小さい外力でも粒子は平板から分離することを顕微高速度カメラによる微視的解析から見出した。また,粗粒子は一次粒子として前後に大きく跳躍しながら移動するのに対し,微粒子は反発係数の小さい凝集粒子を容易に形成し,微小な跳躍を一定方向に繰り返すので,凝集粒子の平均移動速度は粗粒子に比べて大きくなることが分かった。粒子の衝突と反発および粒子の跳躍の軌跡は,傾斜振動平板上への粒子の衝突速度に大きく依存し,理論的確率モデルおよび重力,流体抵抗,粒子-平板間の反発,摩擦を考慮した力学モデルによる粒子軌跡の数値シミュレーションによって説明することができた。本研究で得られた成果は今後,ナノ粒子を含めた微粒子の精密振動輸送の基盤技術の確立に有用な知見となることが期待される。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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