本研究の目的は、スウェーデンの教員養成課程における理論と政策を焦点にあて、政府の目指す教員を育成することができているのかを考察することである。スウェーデンの教員養成課程はかつて職業専門学校において実施されていたが、1974年高等教育改革によって総合大学に組み入れられた。スウェーデンの質保証枠組は学位を提供する全てのプログラムに適用されていることから、教員養成課程の政策をみるにはまずはマクロレベルでの質保証枠組へと焦点を拡げる必要がある。 今年度は、スウェーデンの質保証に関する高等教育局による報告書、先行研究による文献調査に従事した。渡航費を物品費にあてることで研究環境を整備し、研究を達成するのに必要な文献・資料を収集することが可能となり、当初予定していた計画通りの研究を達成した。本研究を通じて、次の点を明らかにした。①スウェーデンの高等教育は専攻分野に関する知識、自律的に学習する姿勢、批判的思考力、問題解決力、ディスカッションのスキル、コミュニケーションのスキル、倫理的視点を修得させることが求められている。②2007年に実施された全国学生調査の結果によると、学生は、高等教育機関での教育を通じて、広い一般教養、批判的考察を身につけることができたと評価している。特に、ディスカッション、口頭発表、レポート作成、クラスメイトと協同で課題に取り組むことに積極的であった。一方で、教員との双方的な関係に関する評価については芳しくないことを考察した。③教員養成課程は、高等教育法において専門的実践の形成、科学的知識と教育活動との関連を明記するなどして、高等教育分野における専門職としての地位を確立しようとしている。国家レベルでの質保証枠組が機関レベルの内部質保証として活用され、質保証が有機的に機能するような仕組みを構築していることを考察した。以上の結果は、研究論文3本、学会発表1回を通じて発表を行った。
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