研究課題
特別研究員奨励費
本研究は、好熱古細菌の有する耐熱性に優れた酵素の利用に向けた基盤構築を目的としている。今年度の成果は以下の通りである。(1) 好熱性クレンアーキオータ門古細菌が有する有用遺伝子資源のカタログ化自然環境からのDNA抽出法の確立が困難であったため、未培養古細菌を含む微生物のDNAを網羅的にシーケンスできるメタゲノム解析には至らなかった。しかしながら、海洋や陸地の熱水環境に生息する(超)好熱菌から構成されるクレンアーキオータ門に属する古細菌分離株について、産業上有用な遺伝子資源のカタログ化に成功した。クレンアーキオータ門古細菌の9属26種から合計43株のゲノム配列をNCBIのReference Sequence databaseより得て、同属内合計240ペアの古細菌を網羅的にゲノム比較した。それぞれの古細菌は多くの独自の代謝関連遺伝子を保有していた。代謝関連遺伝子の機能を詳細に解析した結果、エネルギー生産やアミノ酸代謝に関与する遺伝子が多く認められた。好熱古細菌が保有する遺伝子がコードする酵素は高い耐熱性が見込まれ、将来的な応用利用が期待できる。(2) 好熱性クレンアーキオータ門古細菌のゲノム進化の様式クレンアーキオータ門古細菌の進化に関する学術的に重要な知見を得た。進化とともにゲノム上の遺伝子の位置関係が変化する古細菌は、多様な環境適応を示すゼネラリストである一方、海洋性超好熱古細菌エアロパイラム属を含む10ペアのクレンアーキオータ門古細菌は、ゲノム縮小化が起こった後、自身の生息環境に適応したスペシャリストであると推察された。スペシャリストではその祖先生物で不必要な遺伝子を脱落させ、遺伝子レパートリーが類似していることが示された。さらにスペシャリストは、自身のゲノムの変化を許容しにくいものの、ウイルスと相互作用することでゲノム可塑性を示すことが示唆された。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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